桜散るころ

今年の春は、よく桜を見た気がする。
変な感じ。
忙しいのに、淋しいのに、少し心がからっぽで、桜がやけに瞳にうつる。
防衛本能が働いているのかな。
何も深く感じられない。
こんな時、とても便利。
大人になると、感情が大きく揺さぶられることに弱くなる。
だから、できるだけ感じないように、心にブレーキがかかる。

明日はどんな気持ちになっているのかな。大人になりきれない心が少し不安。

寝顔

最初に会った頃は、
どんなにお酒を飲んでも、同僚の前で寝るようなことはなかった。
だから、初めて眠る姿を見た時、とても嬉しかった。

久しぶりに会って、
穏やかに眠る顔を見て、やっぱりすごく幸せな気持ちになった。

いっぱい頑張っているんだと思う。
いろんな思いを味わっているんだと思う。
でも、誰にでもそんなことを出せる人じゃない。

だから、安心して眠れる相手がいて良かった。
真剣に話ができて、ばかみたいなことで笑いあう
仲間がいて良かった。

どうか、これからもよろしくお願いします。
どんなに苦しくても、あの人が孤独にだけは陥らないように、
そばで見守ってあげてください。
よろしくお願いします。

嬉しくて飲めなくて、
賞味期限がとっくに過ぎても、
いまだ冷蔵庫に鎮座中。

大好きな虹

人は時折
愛されていることを忘れてしまうのかもしれない
「何時に帰ってくるの?」というメールも
帰ったら ご飯が作ってあることも
愛があふれているのに
見えなくなってしまう


どこかのことわざ
「雨が降るから虹が出る」

大丈夫
今は寂しい雨が降り続いていても
いつしか雨はあがって
きれいな虹がかかるよ

だから今は
のんびりと雨の中をいこう

夕暮れ

家路へ向かういくつもの背中の向こうは、
美しい夕焼け空だった。
「きれいな空・・・」
と思わず口にしてしまったので、
そばにいた同僚が、振り向いて空を眺めた。
ほんの一瞬。
感想なし。


その後、たて続けに
「夕日がきれいですね」
と、違う2人に声をかけられた。
同じ感覚。


そこにあるのは同じ空なのに、
見えている景色が違う人もいる。

どちらでもいい。
感覚が同じなのはとてもうれしいし、
違ったら、新しい感覚に気づくことができる。

ただ、きれいなものを、隣で眺めて、
一緒に感じられたらいい。

あなたが少し疲れた時
立ち止まった時
美しい夕暮れや
夜空に輝く月や星が
あなたの心を穏やかに癒してくれますように

おめでとうございます

親を失うということ

    天国さん 
             ハナレグミ

「おとうちゃま ありがとう」と
別れの言葉をかけると
母はホッペを ぴかぴかに輝かせ
いつかの泣き虫 ちえちゃん の顔にもどっていた

あるよ あるよ そこにあるよ
いつもそこにあるよ

「生前父は・・・」と言ったとたん
父はあふれるままに泣きくずれた
肩をふるわせ身をよじらせ ちぎれて泣く父は
いつかの泣き虫 あっちゃん の顔にもどっていた

あるよ あるよ そこにあるよ
いつもそこにあるよ

最後に じいちゃんは 宝のありか 教えたのさ
心のありかは 気づけばいつも そこにあるんですよ・・・と

あるよ あるよ ここにあるよ
いつもここにあるよ






祖母の法事で親戚と共に供養をしながら、
いろいろなことを思い出した。

母は祖父が亡くなった時も、祖母が亡くなった時も、
泣き続けた。
そして、
みなしごハッチになっちゃった」と言った。

父は祖母が息をひきとる直前、
「母ちゃん、頑張らんないかんど」
と、たったひと言、力強く声をかけた。
葬儀の時も、うっすらと目に涙を浮かべただけだった。
祖父が亡くなった時もそうだった。

母らしかったし、父らしかった。
 
4人の祖父母が亡くなって数年経った頃、
母がぽつりと言った。
「お父さんは先にみなしごハッチになっていたのにね、
 強かったね」

表し方は違えど、親を失う悲しみは同じ。
 
私にはまだ分からない感情。
でも、いつか味わわなければならない思い。

無花果

あまりの緊張で、夕食に何をいただいたのか覚えていないけれど、
デザートに出してくれた無花果がとても甘かったことを覚えている。

私が美味しいと美味しいと食べていたら、
「そんなに喜んでくれるなんて」と、
どんどん持ってきてくれて、
ねっとりとした無花果で手がべとべとになった。

たった一度きりだったけれど、
本当の娘のように接してくれたこと、
とても嬉しかったです。
あれから、無花果を見かけるたびに、
買ってみるのですが、
あの時の味を超えるものは見つかりません。

もう、きっとお会いできないと思いますが、
いつまでもお元気で、幸せな日々を送られることを願っています。