親を失うということ

    天国さん 
             ハナレグミ

「おとうちゃま ありがとう」と
別れの言葉をかけると
母はホッペを ぴかぴかに輝かせ
いつかの泣き虫 ちえちゃん の顔にもどっていた

あるよ あるよ そこにあるよ
いつもそこにあるよ

「生前父は・・・」と言ったとたん
父はあふれるままに泣きくずれた
肩をふるわせ身をよじらせ ちぎれて泣く父は
いつかの泣き虫 あっちゃん の顔にもどっていた

あるよ あるよ そこにあるよ
いつもそこにあるよ

最後に じいちゃんは 宝のありか 教えたのさ
心のありかは 気づけばいつも そこにあるんですよ・・・と

あるよ あるよ ここにあるよ
いつもここにあるよ






祖母の法事で親戚と共に供養をしながら、
いろいろなことを思い出した。

母は祖父が亡くなった時も、祖母が亡くなった時も、
泣き続けた。
そして、
みなしごハッチになっちゃった」と言った。

父は祖母が息をひきとる直前、
「母ちゃん、頑張らんないかんど」
と、たったひと言、力強く声をかけた。
葬儀の時も、うっすらと目に涙を浮かべただけだった。
祖父が亡くなった時もそうだった。

母らしかったし、父らしかった。
 
4人の祖父母が亡くなって数年経った頃、
母がぽつりと言った。
「お父さんは先にみなしごハッチになっていたのにね、
 強かったね」

表し方は違えど、親を失う悲しみは同じ。
 
私にはまだ分からない感情。
でも、いつか味わわなければならない思い。